2016-08-10

家と土地はどう分ける?

父が余命6か月と宣告された。父母と同居しているのは、離婚して孫を連れている娘。

息子は大学生時代から家を出て独り暮らし、その後結婚して子どもと奥さんと賃貸住宅に住んでいる。在宅看護しながらも、心配なのは、父が万一亡くなった場合の相続。

家と土地は父母の共有名義。あとは貯金と、父の生命保険。母は2分の一、息子と娘は2分の一を半分ずつ。家と土地は、売れば分けられるが、売ってしまったら残された家族は住むところがない。

父は、酸素吸入していて外に出られないため、公証役場から出張してもらい、「すべての財産を妻に相続させる」旨の遺言を作成した。

父は、その後余命を越え、一年半後に他界した。在宅診療で緩和ケアを受け、在宅看護で手厚く看てもらい、介護保険で出張のお風呂にも入れて頂いた。

ずっと仕事、仕事の父だったが、亡くなる2週間前「お母さんと子どもたちを頼みます」と訪問診療の先生にお願いし、先生はちょっと困った顔をしたけれど、「わかりました、大丈夫ですよ」とにっこりして応え、父は嬉しそうだった。

亡くなる1週間前くらいからは、声が枯れてしまった。力を振り絞り「・・・・・」と口を動かした。

忙しくしていた娘は、「何?喉が渇いたの?」などと答えてしまった。あの時、何を言いたかったのだろうか。今ではわかる気がする。

きっと「あ・り・が・と・う」と言ってくれたのだ。

葬儀後、家族で公正証書遺言を読んだ。息子が異議を唱えた。「不公平だ。」一気に場が凍りついた。

結局、父の公正証書の内容は破棄。相続人の協議となった。

父の相続では、なんとか家と土地は残った。しかし、考えたくないが、母に万一のことがあれば、家と土地を売って相続となるのだろうか。

民法では、兄弟で同じ相続分と決められている。父の看病をしたり、老齢の母を介護していることは、長男にとって関係のないことだろう。

母は、公正証書遺言を作成している。「家と土地は長女に相続させる」しかし、それを長男が納得するだろうか。

悲しいことに相続人の感情のもつれは、家族を崩壊させてしまう。

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